日本テレビ系ドラマ『タツキ先生は甘すぎる!』
こんにちは。
学び舎トーカ代表の岡裕介(サマー)です。
2026年4月に始まった日本テレビ系ドラマ『タツキ先生は甘すぎる!』
フリースクールを舞台にした連続ドラマが全国放送で組まれること自体、とても大きな出来事だと感じています。公式サイトでも、本作は学校に行けない子どもたちの居場所・フリースクールを舞台にした作品として紹介されています。
正直に言うと、私はこのドラマを楽しみにしている気持ちと、少し心配な気持ちの両方で見ています。
楽しみなのは、不登校やフリースクールが「特別な一部の話」ではなく、社会全体で向き合うべきテーマとして可視化されるからです。
心配なのは、「甘すぎる」というタイトルや演出だけが一人歩きして、フリースクールが単なる放任の場のように受け取られないか、という点です。第1話の公式あらすじでも、主人公タツキは「教科書を捨てちゃえばいい」「ここでは楽しいことだけやろう!」と語っています。ドラマとして強い言葉を置くのは分かりますが、現実の現場は、そんなに単純ではありません。
日本テレビ
では、このドラマは本当に現場を知らずに作られているのか。
公開情報を見る限り、そこは少し違いそうです。日本テレビの公式スタッフ欄にはフリースクール監修として石井しこうさんの名前があり、主演の町田啓太さんもインタビューで、川崎市のフリースペース「えん」を実際に訪ねたと話しています。さらに石井さん自身も、実在のフリースクールや心理の現場で培われた理念や実践が、作品の骨格に組み込まれていると述べています。少なくとも、まったく取材なしでイメージだけで作っている、とは言い切れません。
ただし、ここは冷静に見ておきたいところです。
制作側がどの団体に、どの程度、どの段階でヒアリングしたのか、また現場の多様さまで十分に反映しているのかまでは、公開情報だけでは確認できません。
だから私は、このドラマを完全にリアルと持ち上げるより、社会に開かれた入口として歓迎しつつ、現実のフリースクールとは何かを補い続けることが大事だと思っています。
そもそも、いまこのテーマが扱われる背景には、見過ごせない現実があります。
文部科学省の令和6年度調査では、小中学校の不登校児童生徒は約35万4千人で過去最多、高校でも約6万8千人です。さらに小中の不登校のうち、学校内外の機関で専門的な相談や指導を受けていない子どもが約13万6千人、90日以上欠席している子どもが約6万7千人とされています。
これはもう、一部の家庭の問題ではありません。社会全体の課題です。
そして、ここで大切なのは、文部科学省自身が不登校は決して問題行動ではないと明記していることです。
また、支援の目標もとにかく学校へ戻すことだけではなく、子どもが自分の進路を考え、社会的に自立していくことだとしています。
つまり、フリースクールの価値は、学校の代わりに管理することではなく、その子が安心を取り戻し、自分のペースで学びや人とのつながりを回復していけることにあります。
さらに、フリースクールは制度と無関係な別世界でもありません。
文部科学省は、学校外の公的機関や民間施設での相談・指導について、一定の条件を満たせば出席扱いにできるとしています。保護者と学校の連携があり、校長が教育委員会と連携して適切と判断することなどが条件です。
現実には地域差や運用差もありますが、少なくとも制度上、フリースクールは教育の外に置かれた存在ではありません。
では、フリースクールは甘い場所なのでしょうか。
私は、甘いのではなく、順番を間違えない場所だと思っています。
監修者の石井しこうさんは、フリースクールの現場が大切にしているのは、先に整えるのは成績でも生活リズムでもなく、「ここに居ていい」という安心感だと書いています。これは、私自身が日々現場で感じていることとも重なります。
苦しさの只中にいる子に対して、正論や管理を先に置けば、心はますます閉じていくことがあります。先に必要なのは、評価より安心、指導より関係、正しさより信頼です。
もちろん、フリースクールにもさまざまな形があります。
文部科学省も、フリースクールは学習活動、教育相談、体験活動などを行う民間施設であり、規模や活動内容は多種多様だと説明しています。ですから、ひとつのドラマだけでフリースクールとはこういうものだと決めつけるのは危険です。
それでも、もしこのドラマがきっかけで学校以外にも学びの場があるんだ、子どもを急かさなくていい場合もあるんだと知る人が増えるなら、その意義はとても大きいと思います。
少なくとも、これは流行りものではありません。不登校の子どもたちは増え続け、支援につながれていない子どもも多くいます。だからこそ、ドラマをきっかけに、現実の居場所や実践を社会がもっと知ることには意味があります。
ドラマを見て、「本当のフリースクールってどんな場所なんだろう」「甘やかしと寄り添いは、どう違うんだろう」そう感じた方は、ぜひ現実の現場にも目を向けてみてください。
学び舎トーカでも、子どもたちが安心して過ごし、自分のペースで人や学びとつながり直していける場づくりを、日々ていねいに続けています。
ドラマの話題からでも大丈夫です。
「こういう場所が実際にあるんだ」と知ることが、最初の一歩になるかもしれません。


